暗いところで待ち合わせ 乙一 幻冬舎
死にぞこないの青で使わなかった「目の見えない女性の家に隠れる」というアイデアを使って書いた話らしい。
根本的に、スニーカー文庫の「幸せは子猫のかたち」と重なると思います。
あっちは見えない幽霊との交流でしたが、
目の見えない女性にとって家に隠れている男性は幽霊のようなものになります。
ただ違うのは「子猫のかたち」では大学生という曖昧な無色透明な存在だった男性が、この小説では印刷工場に勤務して仕事になじめないで同僚を恨んでいるという
やや労働小説かよ! と思わせるぐらいの設定に変化している。
いや、乙一読んでる人にはあまり感情移入できないと思えるけれど、本質的に、この男性が陥ってる罠はどこの職場にもあるはずで(そのへんのトリックは乙一はきっと考えてると思う)
キツネの話も似たようなもんかも。
で、この小説は感動するよ。まじで。とくに土鍋落ちたシーン。
目の見えない女性の「感謝」が抑えてあるんだけど、それだけにじわーっと心に染み入る。暖かくなる。
こんな感謝もあるんだ。もうね。乙一一生ついていきますって感じ(w
後半はミステリ解決でやや駆け足な感じがしましたが、いい話だと思います(しかし、やや地味かなあ)
主人公達がいわゆるラノベ的ではない地味な職業だったり、境遇なんで、全体が地味なんですよね
そりゃ失踪Holydayみたいに「大金持ちの娘」みたいなラノベ風なほうが全体だ華やかになるので。このへんは微妙な問題ですね